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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第三十六話「怪しい職人」 ロボット怪獣ビルガモ 異次元宇宙人イカルス星人 四次元ロボ獣メカギラス ロボ怪獣メガザウラ 侵略変形メカ ヘルズキング 登場 トリスタニアの住宅街。怪獣たちの襲撃や宇宙人の攻撃、更には爆弾事件により街の各地が 見るも無残に破壊されたが、幸いなことにゴルドンから採取された黄金が豊富にあり、 その一部を復興資金に充てることで、再建が急ピッチで進められていた。ただ、職人の手が トリステイン国だけでは全く足りなかったので、国外から職人を大勢招いての再建となっている。 そしてその日々の中で、住宅街に暮らす少年が寝室から、隣の復興現場に建てられた仮設住宅を 長いこと観察していた。彼は怪獣の脅威からウルトラマンゼロに救われて命は拾ったのだが、 足を骨折して自宅で療養している。しかしその中で、仮設住宅の職人が不審な行動を見せていることに 気づいたのだ。 彼の視線の先の、仮設住宅内の職人の影は、長時間座ったままであった。 (あの男、何をしてるんだろう? あそこに座ったまま、もう24時間になる。いつ食事をするんだろう? 僕が眠ってる間に眠り、食事をしたんだろうか? いや、僕は何度も目が覚めた。あの男はずっと 座ったきりだ。何をしているんだろう……。何か作ってるぞ。何を作ってるんだ?) 少年は職人の手元にあるものをよく観察しようと身を乗り出したが、職人のいるところは薄暗く、 彼の視力では何なのか確認することが出来なかった。 職人の手元では、怪しい発光体が規則的な点滅を繰り返していた。 ウェザリー主導による演劇から数日後。侵略者たちの起こす連続爆発事件の調査を続行した ルイズたちだったが、結局成果はなし。そのため仕方なく、学院に帰還することになった。 だがルイズと才人は、アンリエッタからの招集により、すぐにまた王宮へ向かうことになった。 何でも、火急の用事なのだという。もしや、連続爆発事件に何か進展があったのか。ルイズと才人は はやる気持ちを抑えて、王宮のアンリエッタの下へと駆けつけた……。 「皆さん、これをご覧下さい」 アンリエッタは王宮の会議室で、ルイズや才人、他多くの軍人に見えるように、テーブルに 一枚の大きな地図を広げた。 王宮に到着したルイズと才人はすぐに、大勢の将校が集められた会議室に通された。 二人が会議に混ぜられるや否や、アンリエッタは爆破事件についての会議を開始した。 「これはこの王宮の所在地、トリスタニアの地図です。知っての通り、現在トリスタニアでは 侵略者による爆破事件が相次いでいます。しかし、現場はほとんどが戦略上の価値が全くない ところばかり。実に不可解な行動です」 「相手はどこから現れたかもよく分からん連中。そんなのの考えることですから、我々では 予想もつかないようなものなのではないでしょうか?」 一人の将校がお手上げだと言わんばかりにぼやいたが、アンリエッタは首を横に振る。 「安易に決めつけるのはいけません。わたくしは敵の意図を探るべく、密かに街に降りて 調査をしていました」 今の言葉で、才人は劇場にアンリエッタが現れた理由を悟った。彼女もまた、ルイズたちだけに 任せるのではなく、自ら独自調査を進めていたのだ。 「その結果、爆破事件の理由について、一つの仮説が出来上がりました。まずは、今までに 起きた事件の現場を地図に記します」 皆の視線を地図に戻すアンリエッタ。 「最初にここ、次にここ……。皆さん、何かに気づきませんか?」 全ての現場に相当する部分を赤色で塗り潰すと、皆に尋ねかける。ルイズが一番に察した。 「現場の全てが……王宮から同じ程度離れた場所ですね」 ルイズが今言った通り、事件現場は全てが、王宮から等間隔の地点で発生していたのが、 地図に印すことで判明した。アンリエッタはうなずく。 「その通りです。しかし、破壊された場所はこれで全てではありません。怪獣やウチュウ人自らが 蹂躙した場所も、ここに描き込むと……」 先に現れたアボラス、バニラ、グランゴン、ラゴラスの四大怪獣やマグマ星人たち宇宙人連合の者に 破壊された場所にも色がつけられると、全員が驚愕した。 「壊されたところが、この城を取り囲んでる!」 才人の叫びに首肯するアンリエッタ。 「そうです。爆破事件は、街の破壊された箇所を繋ぐようにして起きていたのです。ただの 偶然とは思えません」 全ての街の壊された部分が赤く塗られると、王宮が360度、赤色で囲まれていることが明らかになった。 だがこれに関して、ルイズが疑問を上げる。 「偶然ではないとしたら、一体……?」 これだけではまだ、宇宙人連合が何のためにそんなことをしたのかが不明だ。それを尋ねると、 アンリエッタは話を変えた。 「今回の爆破事件の現場を修復するに当たり、この国の職人たちだけでは人手が足りません。 故に国外の者も多く呼び入れられています。わたくしが確かめたところによると、その国外の 職人たちは非常に仕事が早く、我が国の者をはるかに上回る腕前なので、今やほとんどの場所の 修復を担当しているとか」 それだけ聞くと良いことのように思えるが、アンリエッタは眉間を寄せる。 「しかしその者たちは全員、素性が完全に不明で、現地の者と親交を全く取らないとのことです。 更に、修復の合間に何やら不審な動きを見せているという話も何人もの人の口から聞きました」 アンリエッタの話した内容で、ルイズが顔を青ざめた。 「それってつまり、その職人たちは、ウチュウ人たちの送ってきた工作員ということでしょうか……!?」 「その可能性は十分にあります。最初に都を破壊し、それを直す職人を装ってトリスタニアに 堂々と侵入する作戦。それが、爆破事件の真相なのでは……。職人を装えば、何らかの危険物を 組み立てていても、家屋の修繕に見せかけてごまかすことも出来るでしょう」 「馬鹿な! ありえませんぞ!」 将校の一人が、信じられないというより認めたくないという様子で叫んだ。 だが、それを否定するかのように、直後に激しい揺れと轟音が会議室を襲った。 「きゃあッ!?」 「な、何事だ!?」 ルイズらが悲鳴を上げると、衛兵が会議室に駆け込んできて、泡を食って叫んだ。 「ほ、報告します! 先般の爆破事件のあった現場に建てられた家屋が崩壊し……金色の、 奇怪な金属製の建造物が出現しました!」 「何ですって!?」 耳を疑うばかりの内容に、アンリエッタやルイズたち、将校らは我先にと廊下に飛び出して、 窓から外の光景を確認した。 果たして、衛兵の報告通りの光景がそこにあった。トリスタニアの街並みの真ん中に、 正面の中央部分に、先に行くほど細くなっている円筒を張りつけたような窓のないビルらしき 物体がそそり立っていた。明らかに中世風のトリスタニアの風景に似つかわしくない高層建造物だ。 しかもその建造物に、どこからか飛んできた棒状のロケットと目玉のような円盤がジョイントした。 そして建造物が火を噴いて浮き上がると、その下に二本の巨大な鋼鉄の柱が入り込み、それとも結合して 柱を脚部に変えた。 全ての合体手順が済むと、奇怪な建造物は黄金色の巨大ロボットへと姿を変えた。ルイズが 声を張り上げる。 「あの合体の方法……タルブ村で見た、ウチュウ人の巨大ゴーレムに似てるわ!」 ゼロはロボットの正体を知っていた。 『あいつはビルガモ! 完成まで建築物に成り済ます、破壊活動用ロボット兵器だ! あれをトリスタニアに持ち込む計画だったって訳か……!』 これが、宇宙人連合の恐るべき作戦であった。卑劣極まるロボット怪獣ビルガモ作戦。 ビルガモは、トリスタニアの街の全滅、王宮破壊、トリステインの全国民と、ウルトラマンゼロの 壊滅の使命を帯びた、悪魔の使者であったのだ。 ビルガモは頭頂部のアンテナから破壊光波を発射し、足元の家屋を複数ひとまとめに爆破した。 街はたちまち市民たちの悲鳴に包まれる。 「何てこと! 直ちに魔法衛士隊を迎撃に出すのです! どうにか被害を抑えて!」 アンリエッタが急いで命令を下すが、衛兵が冷や汗を垂らしながら返した。 「それが、あまりに突然で前兆のないことでしたので、まだ招集も出来ておりません!」 「そんな!?」 「非常事態は、これだけではありません!」 衛兵はもう一つ、悪い知らせをもたらす。 「ゴーレム出現に前後して、レコン・キスタの空中艦隊がトリステインを目指して動き始めたと、 偵察隊からの報告が!」 「何だと! レコン・キスタめ! 先日の大敗をもう忘れたか!」 将校の一人が憎々しげにうめいた。 「現在の位置から推測するに、艦隊がトリステインの領空に入るまで、二日と少々という 結果が出ています! そちらも今から対処せねば、迎撃が間に合わなくなり、領土に侵入されます!」 「何てこった……!」 動揺して舌打ちする才人。空中艦隊にトリステインに侵入されたら、シエスタの故郷の タルブ村がまたも焼かれてしまう。アンリエッタも二つの脅威に同時に迫られ、表情を歪ませた。 「……仕方ありません。こちらの空中艦隊をラ・ロシェールに配備、残る部隊は全てゴーレムの 迎撃と住民の避難誘導を! この二つを同時に進行させるのです! 急いで!」 「はッ!」 命令を受けた将校たちは慌ただしく会議室前から散っていった。 「アニエス、あなたも銃士隊を率いて、トリスタニアの部隊の応援に!」 「はッ!」 アンリエッタは側近のアニエスも送り出した。その後で、ルイズがアンリエッタに呼びかける。 「姫さま、わたしたちにもご命令を!」 振り返ったアンリエッタは、彼女と才人には次の命令を出す。 「あのゴーレムも、通常手段では歯が立たないような強敵でしょう。ルイズには最終手段として、 『虚無』の魔法でゴーレムを破壊する任を与えます。使い魔さんはルイズを守って下さい」 「かしこまりました! すぐに現場に赴きます。わたしの『爆発』に掛かれば、あんな鉄人形なんて……!」 血気にはやるルイズだが、アンリエッタにそれを押し留められる。 「お待ちなさい。これだけの前準備を掛けた作戦です。敵戦力が、今いるだけではない恐れが 十二分にあります。そのため、最終手段と申しました。本当に後がないほどの状況になるまで、 『虚無』を使用してはなりません」 「そ、そうですか。申し訳ございません。早計でした」 過ちを認めて謝るルイズ。『虚無』の魔法は威力が絶大な分消耗がひどく、連発が出来ないことは アンリエッタも把握していた。 「分かってもらえたのなら、早く街へ。この王宮も安全とはいえません」 「承知しました!」 アンリエッタに促されて、ルイズと才人はその場を離れる。二人きりになったところで、 才人がルイズに首を向けた。 「ルイズ、気張る必要はないぜ。俺たちには、ゼロがついてるじゃないか」 『ああそうだ! ビルガモの一体や二体、この俺が侵略者のたくらみごと粉砕してやるぜ!』 才人とゼロの呼びかけにうなずき返すルイズ。 「そうだったわね。ゼロ、お願い! トリスタニアの人々を守って!」 『もちろんだ! 行くぜ才人!』 「ああ! デュワッ!」 才人は即座にウルトラゼロアイを装着した。彼の身体が青と赤の光に変わり、王宮を飛び出していった。 ビルガモはトリステイン軍の抵抗をものともせず、破壊光波を放ち続けて街を火の海に変えていた。 その破壊の勢いは怒濤の如くで、火の手はビルガモの周囲一面を丸々包んでいる。 その暴威を阻止し、人々の命を救う使者が今、ビルガモの面前に降り立つ。ウルトラマンゼロが 炎の中に立ったのだ。 「あッ! ウルトラマンゼロだ!」 火に追われて避難している人々は、ゼロの姿を目にすると、絶望の表情が一瞬に希望の顔つきに変化した。 ゼロはそれに応えるために、果敢にビルガモに向かっていく。ビルガモもまた、攻撃の矛先を街から 最大の障害に切り替えて、ガコンガコンと駆動音を鳴り響かせながら突進していった。 そして激突する両者。その結果は、ゼロが弾き飛ばされるという形になった。 『ぐッ! 重い……!』 ビルガモは元々、宇宙有数の科学力を持つバルタン星人が設計したロボット。その性能は、 あのキングジョーにも匹敵するほどと言われる。ロボット特有の超重量を全て乗せた突進攻撃の威力は、 ゼロを易々と押し返すほどであった。 そしてビルガモはよろめいたゼロに、破壊光波とボディ中央の発光部、腕の先端からの フラッシュ光線をひたすら浴びせ出した。雨あられの攻撃による爆発が、ゼロを呑み込んでいく。 『うおおぉぉぉッ!』 絶え間ない光線の連射に、ゼロは瞬く間に追い詰められる。その火力は、ゼロの脚に火を点けるほど。 ゼロは側転することで脚の炎を振り払った。 『はぁ、はぁ……くそッ、あんまりなめるんじゃねぇッ!』 炎と熱に炙られて早くも息切れするゼロだが、反対に思考は冷静になり、逆転のチャンスを探る。 そしてビルガモのアンテナから破壊光波が発射される寸前に狙いをつけた。 『今だぁッ!』 破壊光波の軌道を読み、その上にウルティメイトブレスレットを乗せる。するとブレスレットが 光波を反射し、ビルガモ自身のボディに命中した。 発光部に当たり、ビルガモは自分が炎に包まれた。バタバタ右往左往している隙をゼロはもちろん逃さない。 素早くストロングコロナゼロに変身し、ビルガモをがっしりと掴んだ。 『うおりゃあああぁぁぁぁッ!』 ストロングコロナゼロはビルガモを軽々と持ち上げ、地面に投げつけた。背部から叩きつけられた ビルガモがフラフラ起き上がっている間に、ゼロはゼロスラッガー投擲の態勢を取る。 「シェアッ!」 ふた振りの宇宙ブーメランが宙を切り裂いて飛び、ビルガモの両腕も接合部から切断した。 ビルガモは強固なボディを持つが、関節部も頑丈とはいかなかったようだ。 『これでフィニッシュだぁッ!』 腕を失いよろめいているビルガモに、ゼロは必殺のワイドゼロショットをお見舞いした。 発光部に食らったビルガモはその部分から爆発を起こし、仰向けに倒れて完全に動かなくなった。 強敵相手でも勢いに乗ったままあっと言う間に勝利したゼロ。が、彼の勘は、これで戦いが 終わりとは告げていなかった。修復現場の仮設住宅の一つに目をつけると、指を突きつけて叫ぶ。 『ビルガモを操作してた電波は、そこから出てるな! 姿を現しな、侵略者ッ!』 と叫ぶと、仮設住宅から白い煙が噴き上がり、不気味な笑い声が沸き起こる。 『イカカカカカ! さすがはウルトラマンゼロ。よく我輩がここにいると分かったじゃなイカ!』 白い煙の中から現れたのは、灰色の肌で耳がやたらと大きい魚面の巨大宇宙人だった。 首の周りには髪と髭が一体化したかのような黒い毛が肩と胸に掛けて茂っており、何故か両手を 顔の位置まで高く挙げている。侵略者のはずだが、どことなくコミカルな印象すら受ける容姿だ。 『どうも。我輩、ビルガモ作戦の責任者のイカルス星人です』 侵略者イカルス星人は、実際とぼけているような口調で名乗った。ゼロは相手に人差し指を突きつける。 『イカルス星人! お前らの作戦は失敗だ! とっとと宇宙に帰りなッ!』 そう言いつけると、イカルス星人は突然哄笑を上げた。 『イカカカカカ! イカカカカカ! イカカカカカカカカカッ!! お腹痛い』 『何がおかしい!?』 ゼロが問い返すと、イカルス星人は笑いを止め、告げる。 『まだ勝った気になるのは早いんじゃなイカぁ? 勝負はまだ一回の表! 逆転こそ我が命! ビルガモは前座。本番はここからじゃなイカ!』 『何だと!』 イカルス星人の宣言の直後に、街に次々と異変が発生した。 「キィ――――――!」 ゼロたちがいる東地区から離れた北地区に、何もない虚空からぬっと、恐竜型怪獣をそのまま 機械にしたかのようなロボット怪獣が出現した。バム星人製の異次元移動機能のあるロボット怪獣、 メカギラスだ。 「ギャアアァアアアアァ!」 西地区からは、ビルガモと同じように仮設住宅を破壊して、怪鳥型ロボットが発進した。 顔のパーツが一切なく、首は三連ビーム砲となっている。暗黒星人バビラーの主力兵器、 メガザウラである。 「ゴオオオオオオオオ!」 南地区からは青いテトラポッド型の円盤が現れたかと思いきや、すぐに無数の破片に分裂し、 それらが再構築して人型巨大ロボットとなった。ベリル星人の侵略用の戦闘メカ、ヘルズキング。 以上の三体のロボット怪獣が、トリスタニアの街中に出現した。 『これだけのロボットを仕込んでやがったのか……!』 さすがのゼロも一瞬戦慄したが、ビルガモは既に倒したので、相手の頭数は四。ウルティメイトフォースゼロ 全員を招集すれば、決して手に負えない状況ではない。 『それに、結局はお前を倒せばそれでいいはずだぜ!』 司令官はイカルス星人。ゼロは狙いをイカルス星人から外さずに攻撃を仕掛けようとするが、 イカルス星人はまたも不気味に笑う。 『イカカカカカ! そう焦るな。我輩、お前と直接戦うなんて、ひと言も言ってないじゃなイカ』 『何だと? まさか、まだロボ怪獣を残してるのか!?』 どうやら、敵戦力はこれでも終わりではないようだ。しかも、イカルス星人は次のことを言い放つ。 『それも、これから出すのが本命なのだ! 出でよぉ~!』 イカルス星人の呼び声によって、大空の彼方から、ヘルズキングのように人型のロボットが ゼロの前へと降りてくる。そのロボについて、イカルス星人が説明する。 『ウルトラマンゼロぉ! あのロボットは、お前を倒すのに実にふさわしい相手じゃなイカ! 何しろアレは、正真正銘、地球人の造ったロボットなのだからな!』 『何ぃ!? 地球製の……ロボット!?』 ゼロは驚いて、新たに出現したロボットを見上げる。 人型の機体は、モザイクのような模様に覆われている。左腕にはガトリングガン、右腕には ビーム砲とシザーアームが備えつけられている。胸部の中心には蓋があり、何をその下に 隠しているのかは不明だが、物々しい雰囲気を放っている。顔面は液晶パネルのようになっていて、 ピピピピと電子音を鳴らしながら放射状に並ぶ赤い線を光らせている。 ゼロはこのようなロボットの存在を、ダイナから聞いていた。彼が忘れることの出来ない敵の一つ。 侵略者の計略により、よりによって彼の故郷のネオフロンティアスペースの地球人類が生み出してしまった 強力無比の無人ロボット兵器。今上空から降りてくるロボットは、その兵器に特徴が一致していた。 『まさか、あれが……!』 ゼロに代わって、イカルス星人がその名を唱えた。 『電脳魔人、デスフェイサー! お前はウルトラ戦士が愛した地球人の造った兵器の手で、 あの世に行くのだぁ~!』 ネオフロンティアスペースの負の遺産、デスフェイサーが今、ゼロへの最大最強の刺客として トリステインの地に蘇った。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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前ページ次ページゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐ 虚無の曜日、トリステイン魔法学院に帰ってきたタバサは自分の部屋で本を読んでいる。 あの後、発狂寸前のイザベラがタバサに与えられた任務の内容はオーク鬼の大群の討伐であったが、タバサは何もせずに学院に戻っていた。 今頃、タバサの指示に従いギャオス達がオーク鬼達を一匹も残さず骨ごと食い尽くしているだろう。 ギャオスが召喚されてからも、世界の流れに特に変化はなかった。 タバサに与えられる任務の数が激減したり、 平民と二股の決闘を見物していたギャオス達が真似をして学院が半壊したり、 ハルケギニア中の吸血鬼達がどこかへ逃げ出したり、 コルベール先生が実験のためと卵を勝手に持ち出し超音波メスの雨を浴びたり、 ガリアのリュティス魔法学院が謎の巨大鳥の襲撃に会い壊滅したり、 ギャオス達の食べっぷりにマルトーが感激したり、 近くの森から生物が消えたり、 他の生徒の使い魔達が失踪する事件が相次いだり、 オスマン氏のセクハラが過激になったり、 ギャオスの群れの総数が200匹を超えたりというようなことはあったが、タバサの日常には変化がなかったため特には問題はない。 サイレントによって周囲で暴れてるギャオスの幼体達の鳴き声を意識から消し、タバサは読書を楽しんでいる。 タバサにとって、この時間は至福のときである。 ―― 始祖ブリミルが、お前の名は何かとお尋ねになると、それは答えた。我が名は ―― 次のページへ進もうとすると、部屋の扉がゆっくりと開かれた。 タバサは侵入者に気付いたが本から目を離さない。 見知らぬ人物が入ってきたら超音波メスで帰ってもらうように指示しているからだ。 しかし、入ってきたのはキュルケであったため、超音波メスは放たれない。 その様子に気づき、タバサはしかたなくサイレントを解く。 「タバサ。今から出かけるから早く支度してちょうだい」 キュルケは小声で話しながらタバサの手から本を取り上げる。 あまり大声で騒ぐと幼体達が暴れだすからだ。 「虚無の曜日」 タバサは短くぼそっとした声で自分の都合を友人に述べ、それで十分であると言わんばかりにキュルケから本を取り返そうと手を伸ばす。 だがキュルケは高く本を掲げる。 背の高いキュルケがそうするだけで、タバサは本に手が届かなくなる。 「わかってるわ。あなたにとって虚無の曜日がどんな曜日だか、あたしは痛いほどよく知ってるわよ」 その理由は、実際に一度超音波メスを受けているからなのだが。 「でも、今はね、そんなこと言ってられないの。恋なのよ、恋」 タバサは首を振った。 どうしてそれで自分が行かねばならぬのか、理由がわからない。 「そうね。あなたは説明しないと動かないのよね。 ああもう!あたしね、恋したの!でね?その人が今日、あのにっくいヴァリエールと出かけたの!あたしはそれを追って、二人がどこに行くのか突き止めなくちゃいけないの!わかった?」 タバサは首を横に振る。 まだ理由がよくわからない。 理由がわからない以上受けるわけにはいかない。 それは失礼というものである。 「出かけたのよ!馬に乗って!あなたの使い魔軍団なら追いつけるのよ!助けて!」 そう叫んでキュルケはタバサに泣きつき、ついでに幼体達も騒ぎだした。 ようやくタバサは頷く。 ギャオス達じゃないと追いつけないなら仕方がない。 「ありがとう!じゃ、追いかけてくれるのね!」 タバサは再び頷く。 キュルケは大切な友人である。 友人が自分にしか解決できない頼みを持ち込むならばしかたがない。 面倒だが受けよう。 タバサは窓を開け、口笛を吹く。 それ聞き、すぐに学院のあらゆる場所からギャオス達が飛んでくる。 「……いつ見ても、あなたの使い魔軍団は凄いわね」 ギャオス達に囲まれ姿が見えなくなったタバサを眺めつつキュルケが呟く。 ふと、疑問に思ったことがある。 「そういえば、こいつらに名前あるの?」 その疑問にタバサはすぐに答える。 「この子はシルフィード」 タバサが目の前のギャオスに視線を向ける。 「この子はアベル」 そのまま隣のギャオスに視線を向ける。 「あの子はコーウェン」 さらに他のギャオスに視線を向ける。 「その子はポルタン、そっちの子はツクヨミ、その下の子はピアデゲム、あの三匹はアマテラスとパルパレーパとスティンガー、その隣の子はジェイデッカー、向こうの子はメガトロン、そこの群れは右からヒルメ、ピサソール、マイトガイン、ゴルドラン、ゾヌーダ、タケハヤ」 「よ、よく見分けがつくわね……」 そんな二人を乗せ、シルフィードと呼ばれたギャオスは飛び上がった。 「馬二頭と人間二人、絶対に食べちゃだめ」 タバサは「絶対に」を強調しつつ目的を伝える。 ギャオス達はタバサに了解の意を伝えると、その翼を羽ばたかせ、巨大な群れ全員で目的の二人、ルイズと才人を探し始めた。 その後、トリステイン城下は大パニックに陥るのだが、町にいる間『イーヴァルディの勇者王』を読んでいたタバサには関係のない話である。 前ページ次ページゼロの使い魔外伝‐災いのタバサ‐
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「今の魔法は何だ?答えろ」 そう質問した瞬間ルイズが凄まじい目でプロシュートを睨み付ける だが生憎プロシュートにとっては相手が貴族だろうと平民だろうと、例え王女であろうと対応は変わらない。 「ディティクト(探知)マジック…どこに耳が、目が光っているかわかりませんからね。驚かせてしまったようで申し訳ありませんでした」 「姫殿下、いけません。姫殿下に乱暴を働いた者に頭を下げるなどと…」 アンリエッタがプロシュートに頭を下げるがそれを見たルイズは必死だ。 もっとも当のプロシュートは涼しい顔でそれを受け流す。 「ああ!ルイズ!ルイズ・フランソワーズ!そんな堅苦しい行儀はやめてちょうだい!あなたとわたくしはお友達!お友達じゃないの!」 「もったいないお言葉でございます。姫殿下」 ルイズが珍しく緊張した声で言ったが、プロシュートはスデに興味なさそーに椅子に座っている。 「やめて!ここには枢機卿も、母上も、あの友達面をしてよってくる欲の皮の突っ張った宮廷貴族たちもいないのですよ!ああ、もう、わたくしには心を許せる おともだちはいないのかしら。昔馴染みの懐かしいルイズ・フランソワーズ、あなたにまで、そんなよそよそしい態度を取られたら、わたくし死んでしまうわ!」 「姫殿下…」 ルイズが顔を上げ心底嬉しそうな笑顔でアンリエッタを見付めた。 以下、延々と昔話に華が咲く 「クリーム菓子を取り合ってケンカしてルイズが常に勝っていた」だの「ドレスの奪い合いでアンリエッタのボディブローがルイズに決まって気絶した」だの プロシュートにとってはどうでもいい事なので適当に聞き流していた。 「…知り合いか?」 「姫様がご幼少のみぎり、恐れ多くも遊び相手を務めさせていただいたのよ」 また話がアンリエッタの言葉尻に影が含まれている事に気付いた。 「どうかされたのですか姫様…?」 「…結婚するのよ。わたくし」 「……おめでとうございます」 普通なら祝うであろう王女の結婚報告だがその沈んだ声を察っするに政略結婚という事がルイズにも理解できた。 そこにアンリエッタが宇宙最強の台詞である「それがどうした」が頭に浮かんで暇そーに椅子に座ってるプロシュートに気付く。 「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら」 「お邪魔?どうして?」 「だって、そこの彼、あなたの恋人なのでしょう?身を挺してあなたを守ってくれたんですもの」 「はい?恋人?あの生き物が?」 その言葉にプロシュートが一瞬反応する。 もしルイズがプロシュート精神の色を知ることができたなら黒に少しだけ赤が混じった事に気付いたであろうが当然それに気付くよしもない。 「姫さま!あれはただの使い魔です!恋人だなんて冗談じゃありません!」 ルイズが首が捩れんばかりにそれを否定する。 「使い魔…?人にしか見えませんが…」 「人です。姫様」 「そうよね。はぁ、ルイズ・フランソワーズ、あなたって昔からどこか変わっていたけれど、相変わらずね」 「好きであれを使い魔にしたわけじゃありません」 憮然としてルイズが返すが、アンリエッタが何回目かのため息を吐いた。 ルイズがその原因を問いただそうとするが思い直したかのようにアンリエッタが話を打ち切ろうとした。 だが、ルイズはそれを振り切るようにしてさらに迫る。 「いけません!昔はなんでも話し合ったじゃございませんか!わたしをお友達と呼んでくださったのは姫様です。そのお友達に、悩みを話せないのですか…?」 その言葉にアンリエッタが決心したかのように頷いき口を開いた。 「今から話すことは、誰にも話してはなりません」 アンリエッタがプロシュートの方をちらっと見てきた。 「オレの任務は護衛だからな…どんな事であれ話は聞かせてもらう」 「メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由などありません」 そのまま沈んだ調子で語りだす。 「わたくしは、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」 「あんな野蛮な成り上がりどもの国に!?」 ハルケギニアの地理に全く詳しくないプロシュートがルイズに問う。 「ゲルマニアってのは何だ?」 「トリステインの北東にある国でお金さえ積めば平民でも貴族になる事ができる野蛮な国よ!」 「そうよ。でも仕方がないの。成り上がりの国とはいえ同盟を結ぶためなのですから…」 アンリエッタがルイズにハルケギニアの政治情勢を説明する。 アルビオンで反乱が起き王室が倒れそうであり、このまま行けば侵攻されるのはトリステインであり それに対抗するための同盟をアルビオンの貴族派が望んでおらずそれを妨げる材料を探している事を だがその説明を聞いているプロシュートの精神はさらに朱に染まっていっている。 大体の事情が飲み込めたのかルイズが顔を蒼白にして問う。 「で、もしかして、姫さまの婚姻をさまたげるような材料が…?」 「おお、始祖ブリミルよ……、この不幸な姫をお許しください……」 アンリエッタが顔を両手で覆い床に崩れ落ちた。ルイズは半分混乱しているようだがプロシュートは冷めた目でそれを見ている。 ルイズもそれにつられたのか興奮したようすでそれを問いただす。 「……わたくしが以前したためた一通の手紙なのです」 要は、アンリエッタが王家のウェールズ皇太子とやらいに宛てた手紙をその皇太子が持っており 皇太子が捕らえられ、その手紙が『ヤバイゲルマニアにIN!』すれば同盟の話が消し飛びトリステイン一国でアルビオンとドンパチやらねばならないという事だ。 「では、姫さま、わたしに頼みたいことというのは……」 「つまり奪還任務ってわけか…?」 心の奥底に沸き立つ赤い物を隠しながらプロシュートがアンリエッタにそう問いかける。 「無理よ!無理よルイズ!わたくしったら、なんてことでしょう!混乱しているんだわ! 考えてみれば、貴族と王党派が争いを繰り広げているアルビオンに赴くなんて 危険なこと、頼めるわけがありませんわ!」 「何をおっしゃいます!たとえ地獄の釜の中だろうが、竜のアギトの中だろうが、姫さまの御為とあらば、 何処なりと向かいますわ!姫さまとトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、見過ごすわけには参りません!」 ルイズは膝を突き恭しく頭を下げる。 「このわたくしの力になってくれるというの?ルイズ・フランソワーズ!懐かしいお友達!」 熱血少年漫画の如く友情を確認しあう二人だが、プロシュートの方は冷静だ。 「アルビオンに赴きウェールズ皇太子を捜し、手紙を取り戻してくればよいのですね?姫様」 「ええ、そのとおりです。ですが礼儀知らずのあの人たちはかわいそうな王様を捕まえて縛り首にしようとしています! わたくしは思います。この世の全ての人々が、あの愚かな反乱行為を赦してもわたくしと始祖ブリミルは赦しませんわ。ええ、赦しませんとも!」 プロシュート達自身が組織を裏切った。いわば組織に対しての『反乱』である。 国と組織の違いとは言え、やっている事は同じだ。 その事をこの世間知らずもいいとこな姫様に『愚かな行為』と言われ『赦さない』と言われた。 それが致命だった。アンリエッタがそういい終えた瞬間プロシュートの精神が全て真紅に染まった。 だが、いい具合に二人の世界に突入しているルイズとアンリエッタは気付いていない。 「一命にかけても。急ぎなのですか?」 「アルビオンの貴族たちは王党派を国の端にまで追いつめています。敗戦も時間の問題でしょう」 「早速明朝にでも出立いたします!」 そうルイズが返し明朝アルビオンに向かう事になったがアンリエッタがプロシュートの方を見つめた。 「頼もしい使い魔さん。私の大事なお友達をこれからもよろしくお願いしますね」 そう言いながら左手を差し出してきた。 だがプロシュートは射抜くような視線をそれに向けただけだ。 「いけません!姫様!そんな、使い魔にお手をを許すなんて!」 「いいのですよ。この方はわたくしのために働いてくださるのです。忠誠には、報いるところがなければなりません」 プロシュートが無言で近付く。 だが二人は気付いていない。プロシュートがそのような事をする為に近付いたのではないという事にッ!! そのままアンリエッタが差し出した左手の前に立ち… 思いっきりッ!その左手をッ!!『踏みつけたッ!!!』 ルイズはその瞬間何が起きたのか理解できなかった。 いや、理解したくなかった。 大切なお友達と言ったばかりのアンリエッタの手を己の使い魔が踏みつけているのだからッ! 「な、なななな何をするだぁーーーーーーーッ!!」 どこぞの英国紳士が憑依したかのようにルイズが叫んだ。 「…ッあ…!」 左手を思いっきり踏まれているアンリエッタだが叫んでは誰かに気付かれるという事もあり声を出さずなんとか耐えていた。 「あんた…!姫様になんて事を…!こここ、この、この生ハ…」 それを言い終える前にプロシュートと目が合ったがそれを見たルイズの声が出なくなる。 目があった瞬間プロシュートの冷徹かつ明確な殺意を持った視線がルイズを刺し貫いていた。 ほぼ同時刻キュルケの部屋 「……なななな何をするだぁーーーーーーッ!!」 「五月蝿いわね…なに騒いでるのかしら…まさかルイズがダーリンを無理矢理…!?」 勘違いもいいとこだが恋は盲目らしく即座に着替えを済ませ隣のルイズの部屋に飛び込んだキュルケが見たものは―― 床にへたり込んだまま動けないでいるルイズと冷徹な目で立ち尽くすプロシュート、そして…手を思いっきり踏まれているアンリエッタがいた。 「ちょっと…これは一体どういう事…?」 一瞬(SMプレイッ!?)と思ったらしいがプロシュートの目を見たキュルケが後日こう語った。 「あ…あの時のダーリンの目…看守が処刑囚でも見るかのように冷たい残酷な目だったわ…『かわいそうだが明日の朝には首だけになってる運命なんだな』って感じの!」 ルイズがそれに押され黙ったのを見るとアンリエッタに向き直り静かに絶対零度まで冷え切った口調で話し始めた。 「テメーに何が分かる…?分かるのか?ええ?おい… 平民が金を積んで貴族に成り上がるのがそんなに野蛮か…?」 「テメーらみてーに生まれ付いての貴族ってのはいいだろうが… その貴族に雑草みてーに踏み付けられてる平民がなりふり構わず成り上がろうとして何が悪い? 成り上がるためにはそれ相応の事をしている…テメーらみたいに生まれた時から平民を支配して当然と思っている貴族共より余程マシってもんだ…」 「ここに召喚されてから感じた事だがテメーら貴族の中に平民と対等に付き合ったヤツがいんのか…? いねーだろうな…オレ自身、あのマンモーニを殺すまで平民の使い魔と呼ばれ貴族共から人間以下の扱いしか受けてなかったからな…オメーもそうだぜ?ルイズよォ~~」 「言うに事欠いて『反乱』が『愚かな行為』で『赦せない』だと? 分かるのか?テメーに…今まで組織に冷遇され『反乱』せざるをえなかったオレ達チームの心がッ! 命がけで任務を成しても何一つ信頼されず『シマ』すら与えられなかったオレ達の『栄光』を求めた『反乱』の何が赦せないだと?」 「アルビオンの貴族連中がどんな理由で反乱を起こしたのかは知らねぇ… だがテメーが言ってる事は踏みつけられた平民が貴族に対して反乱を起こしてもそれを『愚かな行為』だと言ってるのと同じなんだぜ…?」 自分達が命を賭けて起こした組織への反乱。それをこんな何も知らないようなヤツに否定されたと受け取った。 「テメー自身が撒いた種が原因で『不幸な姫』って言ってるのも気に入らねぇ…奪還任務を依頼するってのはいい… 上に立つものが直接やるわけにもいかねーしな…だがオメーはその任務で人が死ぬかもしれないって事を『覚悟』してんのか?」 「その責任を理解せずルイズやオレが死ぬって事を覚悟してねーんならテメー1人で行くんだな… 少なくともオレ達チームのリーダーはその『覚悟』を持って組織を離反したんだぜ…」 そう言い放ちアンリエッタの左手から足を離し部屋の外に出る前にルイズに言う。 「オメー自身が納得できたんならこの任務を受けろ。オレの任務はオメーの護衛だからな… だがそいつがその『覚悟』と『責任』をまだ理解できてねーなら受けるな」 プロシュートが部屋を出てからしばらくすると放心状態だったルイズとキュルケが手を押さえながら蹲っているアンリエッタに気付いた。 「……はッ!姫様!今すぐ治癒魔法!!」 「…構いません」 「ですが…!」 さっきまでとは違い、毅然とした態度でルイズの目をアンリエッタが見据え改めて奪還を依頼した。 「使い魔…いえ、彼の言うとおりです。わたくしはあなたの同情を買うかのようにこの事を頼んでしまいました。 ですが、今は違います。『覚悟』と『責任』を持ってルイズ…貴方に手紙の奪還を依頼します。」 「もちろんですわ…!姫様!」 「この傷は…あなたが無事に戻ってくるまで治さずにおきます」 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール&プロシュート兄貴―ザ・ニュー任務! ←To be continued 戻る< 目次 続く
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デニー友利(36) デニー友利(デニーともり、1967年9月21日 - )は、中日ドラゴンズに所属する投手である(背番号は36番)。父はアメリカ人、母は日本人のため、日本名の友利 結(ともり ゆい)とアメリカ名のローレンス・フランクリン・デニーという二つの名前を持つ。ちなみに「デニー(Denney)」はアメリカ名のファミリーネーム(苗字)のため「デニー友利」という登録名はいわゆる「ダブルネーム(複合姓)」である。 略歴 * 身長・体重 1m92cm、90kg * 投打 右/右 * 出身地 沖縄県浦添市 * 血液型 B型 * 球歴・入団経緯 興南高 - 横浜大洋ホエールズ・横浜ベイスターズ(1987年-1996年) - 西武ライオンズ(1997年-2002年) - 横浜ベイスターズ(2003年-2004年) - ボストン・レッドソックス(2005年) - 中日ドラゴンズ (2006年-) * プロ入り年度・ドラフト順位 1986年(ドラフト1位) * 登録名 友利結(1986-1994年) - デニー友利(1995-1996年) - デニー(1997-2003年) - デニー友利(2004年) - Denney(2005年) - デニー・友利(2006年) - デニー(2007年-) 通算成績(2006年シーズン終了時) * 391試合 18勝29敗30S 415奪三振 防御率3.92 タイトル・表彰・記録 * 月間MVP 1998年7月 * オールスターゲーム出場1回(1998年) * 初登板 1987年10月8日 広島東洋カープ戦(横浜スタジアム) * 初勝利 1995年10月6日 阪神タイガース戦(阪神甲子園球場) 引用元Wikipedia
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前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百十七話「才人よ再び」 奇獣ガンQ カプセル怪獣ウインダム 宇宙捕獲メカ獣Σズイグル 巨大機械人形ゴブニュ(オグマ) 登場 「ただいま」 学校から帰った才人が居間に行くと、そこに母がいた。短めの髪に、最近太り始めた身体。 「母ちゃん。腹減った。飯にしてよ」 「まだだよ」 「何でだよ。味噌汁が飲みたいよ」 何でもない、どうでもいい味なのに、何だか無性に飲みたかった。 「才人」 「何?」 「あんた、やることやったのかい?」 「やることって?」 「あるだろ? 約束したことが」 「約束?」 「ああ。友達と大事な約束をしたんじゃないのかい?」 そう言われても、才人は思い出すことが出来なかった。 焦って、思い出そう、思い出そうとする内に、才人は目が覚めた。 跳ね起きた自分は、ティファニアの家のベッドの上にいた。傍にタバサが座って、本を読んでいる。 目を覚ました才人に、ゼロが真っ先に問いかけた。 『起きたか、才人。気分はどうだ?』 「ん? 何かすっきりした気分だけど……。これってティファニアの呪文のせいなんかな? よく分かんねぇ。いつもと変わらん気がするけど。でもやっぱり、何か消えたのかな」 才人は自分の顔を見つめているタバサに質問する。 「みんなは?」 「先に帰った。あの、ハーフエルフの女の子を連れて」 「そっか……。薄情な連中だな。人に変な呪文かけといて、おまけに置いてけぼりかよ」 苦笑した才人は、今の己の心境を確認する。 ゼロの言った通り、自分の心の中の勇気は消えていないことはすぐに分かった。この星の人たちの ことは今も大事に感じるし、苦しめられる人のために戦う気概も残っている。 だがそれ以上に、今は地球に帰りたい気持ちでいっぱいだった。こっちに来てから、一年以上も 経っているのだ。家族、友達……顔を見たい人はいくらでもいるし、何もすることがなくとも家の 景色が見たい。 それまでルーンの力によって抑圧されていた分の郷愁の念が、一辺に噴出したのだった。 「……こんな気持ちにされるんだったら、ゼロと分かれた時にしてからにしてほしかったよ。 そしたらすぐに帰れたのに」 『すまねぇ。けどこういうのは、機会がある時にやっておくべきなんだ。次の機会が来るまで、 ずっともやもやしたもんを抱えちまうからな』 才人は自分の左手の甲に目を落とした。ルーンの記憶への干渉は消えたが、ルーン自体は そのまま残っている。 それをぼんやり見つめながら、才人はふとつぶやいた。 「俺の……ルイズへの気持ちっていうかさ、それもやっぱり、“使い魔のルーン”が『こっちの 世界にいるための偽りの動機』と一緒に寄越した、偽りの感情だったんかな」 壁に立てかけたデルフリンガーが答える。 「さあね、分からねえ。相棒の心のことだろうが」 「もし、そうだったとしたら……俺はどうすりゃいいんだろうな」 「さて、どうすりゃいいんだろうなあ」 「パムー……」 タバサの頭の上のハネジローは、才人を見つめて心配そうに鳴いた。 「イヒャヒャヒャヒャヒャ!」 その頃、ルイズたちはガンQの襲撃を受けている真っ最中だった。ガンQは恐怖する彼らに対し、 その反応を面白がるかのようにわざとジリジリにじり寄る。 ルイズは考える。こんな場所で何の前触れもなく、計ったかのようにあんな異形の怪獣が 偶然出現するはずがない。あれもガリアからの刺客に違いあるまい。簡単な任務だと思われたが、 やはり自分たちの動向はガリアに掴まれていたのだ。 「わたしとティファニアが一緒になったところを、纏めて捕まえようってことかしら……!」 反射的に才人の名前を呼ぼうとしたが、すぐに言葉を飲み込んだ。勝手に才人の記憶を いじっておいて、ハルケギニアに縛りつけておいて、彼に助けを求める権利は自分にはない。 ルイズは代わりに、こんな時のためにゼロから預かったカプセル怪獣の小箱を取り出した。 そしてギーシュたちの目がガンQに向いている間に、カプセルを一個取り出して放り投げる。 「お願い、ウインダム!」 投擲したカプセルが開き、ガンQのまさしく眼前にウインダムが召喚された! 「グワアアアアアアア!」 「イヒッ!?」 ウインダムはすぐにガンQに掴みかかって、その動きを制した。 「今の内に逃げましょう! ロサイスまで行けば、駐屯軍がいるわ!」 「あ、ああ!」 「ほら、早く立って! それでも騎士隊の隊長?」 腰を抜かしていたギーシュはキュルケに腕を引っ張られた。ティファニアと子供たちは ミーニンに先導される。 「グワアアアアアアア!」 「イヒャアーッ!」 ウインダムはルイズたちから引き離すようにガンQを殴り飛ばすが……吹っ飛んだガンQの姿が 一瞬にしてかき消えた! 「グワアッ!?」 「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」 ガンQはウインダムの背後に現れてからかうように飛び跳ねる。振り返ったウインダムが 飛びかかったが、再び消失。今度は三体になってウインダムを囲んだ。 「イヒャヒャヒャヒャヒャ!」 混乱して何度も身体を左右に振るウインダム。完全にガンQに弄ばれている。 「グワアアアアアアア!」 ウインダムは自棄になって一体に額からレーザーを放ったが……巨大な目玉の瞳孔に 吸い込まれていく! 「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」 ガンQはレーザーのエネルギーを変換し、怪光弾にしてウインダムに撃ち返した。 「グワアアアアアアア!」 強烈な一撃によってウインダムはばったり倒れ、カプセルに戻ってしまった。 「ウインダムが、あんな簡単に……!」 戦慄するルイズ。自分たちはまだ全然逃げられていない。 それでも走らねばならぬ、と懸命に足を動かすのだが……行く手に別の怪獣が立ちふさがっていた! 「な、何だあいつは!? 怪獣か……ゴーレムか!? どっちだ!?」 惑った感じに叫ぶギーシュ。彼の言う通り、新たな怪獣は大部分が金属になっており、 生物とロボット、どっちつかずのような見た目であった。 正面から見たら十字架のようなシルエットは、宇宙捕獲メカ獣Σズイグル! その中央部の 蓋が開き、現れた四連の砲門がティファニアに向けられる。 「! 危ないッ!」 「きゃッ!」 ルイズは咄嗟にティファニアを突き飛ばしてかばった。その代わりにルイズが、Σズイグルから 放たれた光弾を食らう……! 「……あれ?」 反射的に受け身の姿勢を取ったルイズだったが、吹っ飛ばされることは愚か何のダメージも なかった。逆に怪訝な顔になるルイズ。 だが、やはり何もなしではなかった! 彼女の両手の甲に、金属片のようなものが取り つけられていたのだ。 「これは……? うッ!?」 その部分から電流が発せられ、ルイズは磁力により無理矢理腕を広げさせられた。 すると金属片が増殖するように広がっていき、たちまちルイズを閉じ込める十字架へと 変化したのだった! 「ル、ルイズ!」 「馬鹿! あんたが捕まっちゃ意味ないでしょ!」 ギーシュとキュルケはすぐにルイズを助けようとしたが、十字架がΣズイグルに引き寄せ られていき、ルイズは砲門の部分にすっぽりと収まって囚われてしまった。 「ルイズを返しなさいッ!」 「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」 Σズイグルに杖を向けるキュルケたちだったが、その前にガンQが跳んできて立ちはだかる。 キュルケの放った『ファイアー・ボール』はガンQに吸い込まれてしまい、全く効果がなかった。 「くッ……!」 「わたしが、記憶を奪います!」 キュルケに代わって、呪文を詠唱したティファニアがガンQに『忘却』の魔法を掛けた! これでガンQは記憶を失い、無力化するはず……。 「イヒヒヒヒヒヒヒヒ!」 そう思われたが、ガンQに何の変化も見られなかった。『忘却』の影響まで受けていない! 「う、嘘!? わたしの魔法がちっとも効かないなんて……!」 初めてのことに衝撃を受けるティファニア。だがガンQはまともな生物ではない、いや科学的な 見地からでは一切分析することが不可能なほどの、不条理が形を成した怪獣。『忘却』の効果を 受ける脳が存在しないのだ! キュルケたちがガンQに足止めされている間に、Σズイグルは空高くに向けて浮上していく。 その先の空間にワームホールが開かれた。 「見ろ! 空に穴がッ!」 「ルイズを連れ去るつもりよ!」 「は、早く何とかしないとまずいぞ!」 「もう魔法の射程外よ……! こんな時に、せめてタバサがいてくれたら……!」 無力さを悔しさとともに噛み締めるキュルケ。タバサのシルフィードならば、ガンQをかわして 上空へ逃げるΣズイグルを追いかけることも出来るのに。 「くッ……!」 一方でΣズイグルに囚われているルイズは、必死にもがいて脱出を図るも、少女のか弱い 筋力ではそんなことは土台不可能であった。 それでもルイズはゼロに、才人の名を呼ぶことだけはせずに、最後まであきらめない気持ちで 抵抗を続けた。 ルイズたちの異変を感知したミラーナイトは、同時に出現した怪獣を多少無理してでも 迅速に倒し、ルイズを助けに鏡の世界の道を全速力で駆けていた。 『間に合え……! ルイズ、今行きますッ!』 ミラーナイトは肩を負傷していた。怪獣を素早く倒すために捨て身の戦法を取ったため、 その代償として受けた傷だ。 だがミラーナイトは苦痛も振り切って、ルイズのために急ぐ。アルビオンはもう目の前だ。 ……が、途中で目に見えないバリアに激突して、それ以上先に進めなかった! 『な、何ぃッ!? 鏡の世界に、道を阻む障壁が!?』 衝撃を受けるミラーナイト。これは明らかにただごとではない。これもガリアの妨害か! しかし、まさか鏡の世界にまで干渉してこようとは! この分では、外部からもアルビオンに 突入することは不可能だろう。 こんなことまで出来るとは、一体ガリアはどれだけの力を有しているというのか! ……いや、 今問題なのは、ミラーナイトたちまでがルイズを救出することが出来ないということだ! ルイズはこのまま、ガリアの手に落ちてしまうのだろうか! 「ん?」 己の感情について悩む才人の左目が不意にかすんで、空の光景が映った。遠く眼下には 怪獣ガンQと、ギーシュたちの姿がある。 それは使い魔のルーンの効力により、つながったルイズの視界だった。彼女が重大な危機を 感じたことで、自動でルーンの力が発動したのだ。 「全く……何であいつってば、こう間が悪い訳?」 苦々しくぼやきながら、ベッドから飛び降りる才人。そこにゼロが尋ねる。 『才人、行くのか』 「当たり前だろ」 『……戦えるのか? 今の心境で』 心配するゼロだった。望郷の念で心がかき乱されている状態で、満足に力を発揮できるのか。 下手をしたら、才人に最悪の事態が起こる。 しかし才人は安心させるように、フッと笑った。 「大丈夫だ。何か、急にやる気になってきたからさ」 「相棒、娘っ子のことは好きなのかね?」 デルフリンガーが聞くと、才人は憮然とした声で返した。 「いや、やっぱり好きじゃねぇ。あんな女、わがままで、バカで、気位ばっかり高くって……。 冷静に考えてみると、やっぱり全然好きじゃねぇ。というか腹立つ。何捕まってんだよ。迷惑だっつの」 「じゃあ何で、助けるんだね?」 「……そんな女だけど、悔しいことに見てるとドキドキすんだよね。これが巷で言うひと目ぼれ だとしたら、俺はその存在を呪おうと思う。あーあ、せっかくさよならできるところだったのに……」 ぼやいていると、タバサが笑っているような気がして驚いて振り返った。 「なぁお前、今笑った?」 「気のせい」 「なぁ、笑ったろ! なぁ!」 「パムー」 ハネジローは嬉しそうな鳴き声を上げていた。 『才人! 行くんなら早くしねぇと間に合わねぇぞ!』 「ああそうだった! タバサ、先に行くぜ!」 才人はウルトラゼロアイを出すと、いつもよりも勢いよく装着した。 「デュワッ!」 Σズイグルは既にワームホールのすぐ真下にまで差し掛かっていた。後一分もしない内に、 ルイズはどこか別の場所へ連れ去られてしまうことだろう。 もう駄目だと、ルイズがギュッと目をつむった、その時、 「シェアァァッ!」 猛然と飛んできたゼロがΣズイグルに飛びつき、ワームホールに突入するのを阻止した。 「えッ……!?」 驚いて目を開けるルイズ。ゼロは捕まえたΣズイグルを引きずり下ろし、自分ごとまっさかさまに 地上に叩き落とした。 「テェヤッ!」 起き上がったΣズイグルの中から、ルイズはゼロの立ち姿を、その中の才人を見つめた。 「サイト……どうして……?」 『ルイズ! 元々動けねぇだろうけど、じっとしてろよ!』 才人の声が聞こえた。ルイズはゆっくりと目を閉ざすが、先ほどの絶望の現実から目をそらす 行為とは異なり、心から安心して才人にその身を託す意志が宿っていた。 「ハッ!」 ゼロはデルフリンガーを出すと、一瞬でΣズイグルに剣を突き立て、刃を走らせた。 そして引き抜くと、刃の上に繰り抜かれた十字架が乗っていた。何と精緻な達人技か! 「ルイズ!」 ゼロはデルフリンガーを地面に刺し、十字架を滑らせてルイズを地上に下ろした。そこに キュルケたちが駆け寄り、ギーシュのワルキューレによって十字架がこじ開けられた。捕獲を 目的としたもののためか、強度はそこまでではなかった。 危ないところでルイズを取り返すことは出来たが、怪獣たちを倒さないことには状況は 変わらない。ΣズイグルとガンQ、二体の怪獣が同時にゼロに攻撃してくる。 「イヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」 Σズイグルは腕を出して、指先から光弾を乱射してくる。ガンQは肉体から複数の眼球を 飛ばして、そこから怪光弾を発射する攻撃だ。ゼロは四方八方からの集中攻撃に晒される。 『ぐッ……!』 猛攻に一瞬ひるむゼロだったが、すぐに体勢を立て直して叫んだ。 『何のこれしき! 今日の俺たちは、ちっとばかし過激だぜぇッ!』 光弾を浴びながらもガンQに向けて跳躍。空中からの回し蹴りを食らわせる。 『でりゃあッ!』 「イヒャアッ!?」 眼球からの光弾を途切れさせると、バク転しながらΣズイグルに接近。雷光の如き勢いで チョップを振り下ろした。 『だぁぁぁッ!』 手刀は本物の刀のようにΣズイグルの右腕を切断した! Σズイグルは大きくよろめく。 一方でガンQが起き上がるが、ゼロはそれを待ち受けていたかのように高速移動で肉薄し、 ガンQのど真ん中に鉄拳を繰り出した。 『せぇぇぇぇぇあぁッ!』 「イヒャァーイッ!」 ガンQは殴り飛ばされて宙を高々と舞い、森の中に転落した。 そしてゼロは振り返りざまにワイドゼロショットを発射! Σズイグルは光弾を撃って 反撃するが、必殺光線は光弾も軽々押し戻してΣズイグルに突き刺さった。 強烈な一撃により、Σズイグルは一瞬にして爆散した! 「イヒィッ!?」 『お前にはこれだッ!』 ゼロはΣズイグルを撃破した勢いのままに振り向き、ルナミラクルゼロに変身すると地を蹴り、 ガンQに向けて一直線に飛んでいく! 『はぁぁッ!』 ゼロスラッガーを両手に握り締めて、ガンQの目玉の中に自ら飛び込んだ! 次の瞬間に、ガンQは内側からズタズタに切り裂かれる。 「イヒャアアア――――――!?」 ガンQが一瞬大きく膨らみ、破裂。跡にはウルトラマンゼロが片膝を突いた状態から、 カラータイマーを鳴らしながら立ち上がった。 「す、すごい! 今日のゼロは一段とすごい戦いぶりだったな!」 流れるような戦いぶりで敵を二体、瞬く間に打ち破ったゼロに、ギーシュが熱にうかされた ような声を上げた。その後ろでは、ルイズがゼロを見上げて様々な思いが入り混じった微笑を浮かべた。 と安心し切っていた彼らだが、 ドズゥゥンッ! 「!?」 ゼロの背後にいきなり巨大ロボットが着地したのだった。首と胴体が一体化した左右非対称の 歪な外見であり、顔面部分の四つのランプがスクロール点滅している。 巨大機械人形ゴブニュ、オグマタイプだ! 『まだいやがったか! であぁッ!』 ゼロが瞬時に詰め寄ってパンチを浴びせたが、ガァァァンッ、と鈍い音が鳴るだけで、 ゴブニュはびくともしなかった。 『か、かってぇぇッ! 尋常じゃねぇ硬さだ!』 拳が痺れてあえぐゼロ。ゴブニュ・オグマタイプの装甲は特殊な金属製であり、よほどの 破壊力でなければ傷一つつかないほどの頑丈さなのだ。ゴブニュは腕で自らのボディを叩き、 まるで堅牢さをアピールしているようである。 ゼロもまた、生半可な攻撃は意味がないことを悟るが……そんな時に限ってカラータイマーの 点滅の間隔が早まり、エネルギーがもうほとんど残っていないことを知らせた。 『しまった! 最初に飛ばしすぎたぜ!』 強力な必殺光線を放つ分も残っていない。ルイズも魔力切れを起こしているので、彼女の 魔法でエネルギーチャージすることも不可能だ。万事休す! ゴブニュはゼロに鉄拳を返す。 『ぐわぁぁぁぁッ!』 殴り飛ばされたゼロが崩れ落ち、片膝を突く。もう立っていられるだけの余力すらなかった。 『も、もう限界だ……! 変身を解かざるを得ねぇッ!』 これ以上のエネルギー消費は最早命に関わる。ゼロはやむなくその場で変身を解き、消えていった。 「ぜ、ゼロが消えてしまった! ぼくたちはもう終わりだぁぁぁーッ!」 「だから、すぐに取り乱すんじゃないのッ!」 頭を抱えて絶叫するギーシュを叱ったキュルケだが、彼女も内心ではどうすればいいのか 分からない状態であった。あのゼロの攻撃も寄せつけないゴブニュを退ける手段が、今の 彼女たちには残されていない。 ゴブニュはこちらに振り向くと、ルイズを狙って突き出た頭頂部の尖端から放電を飛ばしてきた! 「きゃあああッ!」 ルイズの危機! そこを救ったのは、横から飛び込んできたタバサ。シルフィードに跨った 彼女は素早くルイズを拾い上げて、電撃から逃れた。 「よぉ」 シルフィードの上には才人もいた。変身解除と同時にタバサが回収していたのだった。 ルイズは彼に向かって思わず叫んだ。 「あ、あんた、何で来ちゃったのよ! 呼んでないでしょうが!」 「勝手に危なくなっといて、よく言うぜ。俺だってなぁ、出来ることなら来たくなかったよ」 ケッと目を細めて憎まれ口を叩く才人。 「けど、キュルケやギーシュ、ティファニアがやべぇだろうが。シエスタとか姫さまとか、 タバサの母ちゃんだってほっとけねぇだろうが。俺は友達を助けに来ただけだ!」 「何ですってぇ? わたしはどうなのよ! その中にわたしは入ってない訳!?」 ルイズは頭に血が上り、怒鳴り返した。 「何よ! やっぱり使い魔だから好き好き言ってたのね! さいってい!」 才人は怒りを通り越した声で叫んだ。 「あのなぁ。あんだけ好き好き言ってるのに、応えてくれない女を好きになる奴なんていねぇよ!」 「え?」 「お前といえば、気位ばっかり高いわ、すぐに怒って暴力を振るうわ、そのくせいい気になったら すぐ調子に乗るわ。お前が好きだなんて言ってたのは、やっぱり使い魔としての好きだわ。以上でも 以下でもありません。俺はこれから、そういうことにする」 「ちょっと待って! ほんとに認めないでよ! ひどいわ!」 才人とルイズがやいのやいの揉めていると、デルフリンガーが割り込んだ。 「相棒も娘っ子もいちゃついてるとこわりいんだけど、そろそろあれを何とかするのを考えねえとやべえぜ」 「誰がいちゃついて……うわッ!?」 才人とルイズが怒鳴ろうとしたが、シルフィードが急に傾いたので舌を噛みそうになった。 ゴブニュがシルフィードを狙って電撃を連続で飛ばしてきているのだ。シルフィードは 巧みにかわし続けているが、このままではいつ撃ち落とされるものか分からない。 タバサがルイズの方を向いた。 「虚無」 「撃てないのよ!」 「何故?」 「精神力が切れちゃってるの!」 「溜めとかなきゃ」 「虚無は寝れば溜まるってもんじゃないのよ!」 タバサはしばらく考えると、いきなり“レビテーション”を唱えて、才人を自身の側に手繰り寄せた。 「ど、どうしたんだタバサ?」 戸惑う才人に、タバサはルイズにも聞こえるような声で、才人に告げた。 「この前の続きをする」 「は? この前の続きって何……むぐッ!?」 才人の言葉はさえぎられた。タバサの唇で。 タバサは才人に突然キスをしたのだった。しかも濃厚に舌を絡めて、吸い上げる。 「パムー!」 ハネジローは恥ずかしげに小さな手で目を覆い隠した。 一方、この光景を見せつけられたルイズは一瞬、頭が真っ白になった。しかしキスをしていると いうことを理解すると、肩が地震のように震え出す。 「あ、あんたたちぃ……こここ、こんな時にぃ……」 タバサは才人の首に腕を回し、小さな身体を密着させる。 「こ、ここ、この前の続きですってぇ―――――――――――ッ!? やっぱりそういうこと してたんじゃないのぉぉぉ――――――――――――――――――――ッッ!!!」 桃色の髪がぶわっと逆立ち、鳶色の瞳が燃え上がった。極限まで高められた怒りが精神力を 生み、魔力のオーラとなってルイズの身体を包んだ。 タバサは才人の身体からぱっと離れた。 「今」 ルイズは我に返り、“エクスプロージョン”の呪文を唱え始めた。 その様を呆気にとられてながめる才人が、ハッと気がついた。 「そうか! タバサはこれを狙って! わざとルイズの怒りを招いて、精神力を回復させたんだな!」 『えーッ!? これでいいのか!?』 ゼロが思わず叫んでいた。 呪文を完成させたルイズは、溢れ出そうな魔力を杖の先の一点に集中し、一気に振り下ろした。 白い光が、ゴブニュの一点に現れた。 光が大きく広がってゴブニュを包み込む、次いで耳をつんざく爆発音が響いた。 もうもうと立ち昇る硝煙。ルイズと才人は降下したシルフィードの上から地面に下りる。 「やった……か?」 静かにつぶやく才人。ゴブニュがどうなったかは、煙に紛れていて見えない。あれほどの 爆発を受けて、無事では済まないと思うが……。 だが……煙の中からぬっとゴブニュが出てきた! 「!?」 思わず言葉を失うルイズたち。まさか、エクスプロージョンでも倒せなかったのか!? ゴブニュはルイズたちに向けて腕を伸ばす。 「も、もう駄目だわ! 逃げましょう!」 「い、いや待った!」 ルイズは必死の体で逃げ出そうとしたが、才人が呼び止める。 何故なら……ゴブニュは腕を前に伸ばした姿勢で、硬直したからだ。そのまま微動だにしない。 顔面の四つのランプからは、光が消えていた。 茂みに身を隠していたギーシュは、唖然とつぶやいた。 「た……立ったまま死んでる……」 ――ロボットなので死んでいるという表現はおかしいが、ゴブニュは完全に機能停止になり、 それ以上全く動き出す気配を見せなかった。 その後、ゴブニュを各国の研究者が回収しようとしたが、あまりにも重すぎて運ぶ手段がなかった。 しかし砕いて破片にすることも出来ず、装甲の特殊金属は『錬金』も受けつけなかった。 やむなくゴブニュは、その場に捨て置かれることとなった。やがてロサイスと忘れられた村を つなぐ道の途中にいつまでも仁王立ちし続けるゴブニュは、アルビオンの新名所として有名になったという。 「うーんうーん……」 ロサイスからトリステインに戻るフネの中、才人はボロボロになって船室のベッドの上で うなされていた。 どうしてこんなことになっているかと言うと、タバサとのキスでの怒りが“虚無”に費やしても 収まらなかったルイズによって、半ば八つ当たり気味にボコボコにされたからであった。 そこに扉が外からノックされて、ルイズがバツの悪そうな顔で室内に入ってきた。 「あのね。一応、聞いてあげる。大丈夫?」 「お前……殴り過ぎ」 憮然と文句を向ける才人。 「あ、あんたが悪いのよ。あんたが、使い魔としての好きとか言うから。う、嘘に決まってるわよね。 あんた、わたしのこと大好きだもんね」 「こんなことされて、そう言える奴がいたら連れてこい」 「へ、へんだ。大好きなくせに」 「あのな、逆だろ? お前が俺のこと、好きなんじゃねぇか」 「ま、まま、ままま、まさか!」 顔を真っ赤にして両手をぶんぶん振るルイズ。 「大好きだから、あんなにやきもち焼くんだろ? さっきのキスで怒って精神力が溜まったのだって、 つまりはそういうことなんだろ。見え見えなんだよ」 う~、と半泣きでうなるルイズだが、うなずいてひと言、 「……そうね。そうかもしれないわ」 「え?」 才人が振り返ると、ルイズは勝ち誇った笑みを浮かべた。 「いやだ。犬が涎を垂らしてるわ」 「だ、騙したな! そういうことするからなぁ……!」 プイッと横を向いた才人が、照れ隠し気味に告げる。 「やっぱり、俺、時が来たら帰るからな。本当にな! ……でも、今の中途半端な状態のままじゃ この世界のことが心配で、夜も眠れなくなっちまいそうだ。だから、帰るのはこの世界がある程度 落ち着いてからにするよ」 『才人、本当にいいのか? 別に、無理して俺たちにつき合わなくたっていいんだぜ』 問いかけたゼロに、才人は力を込めて答えた。 「無理じゃないさ。ここで投げ出したら、男が廃る! そうだろ?」 『……違いねぇな』 ゼロは安堵した声を出した。 ルイズの方は、才人のハルケギニアに留まる宣言に嬉しさを感じていた。自分を助けに 駆けつけてくれたことと、ぶっきらぼうな言葉の裏に、自分への愛情を仄かに感じる。 ティファニアの呪文を越えた今、それは彼の本当の気持ちだと分かる。 しかしそれが分かってなお、ルイズには不安が残っていた。自分自身の魅力に自信がないから、 才人が義理で助けてくれているのではないかという気持ちがしこりのように残り、素直になる ことが出来ない。 そのため、本心とは裏腹な言葉を吐いてしまう。 「あ、操られているのはわたしだもん。使い魔に情を抱くように条件づけられているのよ。 だからやきもちを焼いたりしちゃうし、したくもないのに、こんなことしちゃうのね。きっと」 「え? んむ……」 ルイズはタバサのキスを上書きするかのように、才人の唇に自分のそれを重ね合わせた。 才人は唇越しに、ルイズの言葉の嘘を感じ取った。ルイズのキスには熱があるから。 その熱とともに、夢の母が言った、『やること』の意味を噛み締めていた。 アルビオンからトリステインへと近づいていく中で、二人は熱いキスを交わし続けた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
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ある日、何者かに『矢』で射抜かれ、その身に発現した超能力、『スタンド』! 一体誰が?何のために?まともな感覚を持っているなら疑問は次から次へと湧いてくるはずだが、彼―――間田敏和の心中は、『この不思議な能力をどうやって有効活用するか?』という考えで満たされていたッ! せっかく普通の人間には無い能力を手に入れたのだ。他の奴らよりもっと楽しく自由に、実りのある人生を送りたいではないか! そう思った彼は、さっそく自らのスタンド―――『サーフィス』で片思いだった順子をコピーし、好き放題してやろうと自室へ連れ込んだのであるが・・・・・。 バッチィィ―――z___ン! 今まで思い描いてきたあんなことやこんなことを実現できるという喜びに、すっかり緩んでいた間田の顔面を襲ったのは、他でもない、サーフィス順子が放った平手打ちだった!そのあまりの威力に間田は吹っ飛ばされ、部屋の隅に無様な格好で転がる。 そんな間田に、今度はサーフィス順子の怒鳴り声が襲い掛かる。 「間田君っ!貴方ねえ・・・どんなことしてるか、わかってるの!?」 「は、えっ?」 突然のことに、ブン殴られた頬を押さえ、涙目になりながら返事を返すことしかできない間田。サーフィス順子は容赦なく、彼に罵声の数々を浴びせる。 「女の子を無理やり部屋に連れ込んで、こんな仕打ち・・・・貴方は男として最低よッ!」 「前から思ってたけど、こんなに陰険で卑怯な手段を使うなんて・・・・・何で貴方は、そんな手段を使おうとしかしないのッ!?」 「気に入らないことはすぐに暴力や卑怯な手を使って解決しようとして・・・!そんなの、人間としてクズだわ!」 「知ってるのよ!貴方が授業中にキン○マいじってるの!学校まできて何キモいことやってんのよ!!」 「大体その髪型はなんなワケ!?頭にエチゼンクラゲ乗っけてるみたいじゃない!カッコイイとでも思ってんの!?」 「貴方みたいなヤツを人間として認められるわけないわ!貴方はカスよ!ゴミ以下よ、ゴミ!」 「ううッ!・・・グググ・・・・クキィーッ!!」 スタープラチナのラッシュもビックリなほど、隙無く連打される言葉というパンチの応酬! あまりの悔しさに――――予想以上に自分が順子に嫌われているというショックもでかかったが――――間田は、その場に卒倒してしまったのである! 数時間後。 気絶から覚めた間田は、サーフィス順子から浴びせられた言葉を反芻していた。 サーフィスがコピーした偽者とはいえ、このスタンドは相手の外見、性格、記憶まで完全にコピーする。たとえ偽者とはいえ、 あれらの言葉は常日頃、順子が彼に対して思っていたことなのだ。 後半はほとんどただの罵倒だったが・・・・・・大きな目を潤ませ、彼女が浴びせた言葉には、間田自身も心当たりがあった。 些細なことで喧嘩をした友人に、一生心に残ってしまうような傷を与えてしまったこともある。 気に入らない相手に陰湿な手段を使って攻撃したこともある。 ――――考えてみれば、俺の今までの人生は、『卑怯』という2文字に塗りつぶされていた。 間田は考える。なぜ自分は、音石明に協力して承太郎を町から追い出そうとし、最後には殺そうとまでしたのだろうか。 承太郎が気に入らなかったから?己のスタンドを誇示したかったから? いや、違う。 『音石明が怖かったから』・・・・ただそれだけのことだ。電撃をまとい、電気の存在するあらゆる場所に現れる彼のスタンド『レッド・ホット・チリペッパー』は、 小心者の間田に恐怖心を植え付けるには充分すぎる力を持っていた。 間田は音石明に従った。それこそ、不良に媚びへつらう使い走りのごとく。彼の命令どおり、何の関係も無かった1年生の仗助と康一に危害を加え、承太郎を抹殺しようとした。 もっとも、その命令は失敗に終わり、サーフィスは破壊され、間田は自分が痛めつけた一般人の男2人にコテンパンにやられてしまったのであるが・・・。 間田は考える。『生き方を変えよう』と。 『改心した』などと白々しいことをいうつもりは無い。自分はサーフィスの能力を悪用し、多くの人を傷つけてきたのだから。 だが、彼はどうしても変えたかった。いや、『変わりたかった』のだ。 卑怯で陰険で・・・・小心者だった過去の自分にオサラバし――――優しくて、タフで、頼りになる男に。 うわっ面の使い魔 「ったく、せっかく決意したってのに・・・・このままじゃ張り合いがねーよなぁ」 学生服を着込んだ男が不満げに呟きながら道を歩いていた。 だらしなく伸びた黒髪に、痩せた体。俗に言う『オタク』という人種の外見だった。 彼の名は間田敏和。ぶどうヶ丘高校に通う3年生である。 『優しくて、タフで、頼りになる男』になろうと決めてから早一ヶ月。結論から言うと、彼は全然変わっていなかった。 単に自分の努力が足らないだけとも言えるのだが、間田は何故か周囲のせいにしていた。 「なんつーかなぁ・・・冒険が足りねーんだよ、冒険が」 曰く、炎髪灼眼のツンデレ美少女と共に紅世の徒と戦ってみたいだの、死神代行になって開放とかしてみたいだの。 そんなことで自分が変われると思っている時点で彼は立派な中二病なのだが、平和になった杜王町にそんな冒険の気配はナッシングだった。 「吉良吉影みたいなのがまた来てくれれば、なんて言わねえけどよぉ~。血湧き肉踊るような戦いの日々に身を委ねてみたいぜ・・・ん?」 そう言いながら、彼は一軒の書店の前で足を止めた。 「おっと、いけねー。今日は『キラ☆スタ』の発売日だったんだ。買ってくか」 愛読書の最新巻が発売されることを思い出し、進路を変えた直後。 突如、眼前に光り輝く鏡のようなものが現れ、猛スピードでこちらに迫ってきたのだ! 「な・・・何だよこりゃあ!う、うわぁーッ!!」 鏡はあっという間に間田の身体を飲み込み、徐々に小さくなり・・・消えていく。 ―――スタンド使い、間田敏和。彼の冒険はここから始まる―――。
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―真っ暗だった (ここは一体、あたしは…) エルメェス・コステロは暗闇の中にいた。 記憶がはっきりしない。 確か自分は徐倫たちといっしょに神父と戦っていて、 時が加速して、 エンポリオの幽霊の弾丸を利用して海へと逃げて、 アナスイの作戦を聞いて、 ニュー神父が来て、 それから… そうだった。 自分は神父の新しいスタンドの攻撃(といっても打撃だが)を喰らい、そのまま海で息絶えたのだ。 (…じゃあここが、死後の世界ってやつ?) 死後の世界、キリスト教でいう天国。 確か死んだ人間がたどり着く楽園とか言ってたっけ。 しかしここは幼いころに親から聞いていたそれとはまったく違っていた。 何もない。 罰則や規律に守られた刑務所も、温かみあふれる家庭も、ともに笑いあった仲間も、光さえも存在しない完璧な暗闇。その中で自分は横になっている。 (そうだ、あいつらは?) 周りから聞こえてくるのは雑音だけで仲間の声はしない。死んだのは自分ひとりなのだろう。 (情けねぇなあ、あたし…) いつか自分が倒した男の口癖をつぶやく。 結局自分は助けられているだけで、助けることはできなかった。徐倫と出会い、そして文字通り死ぬまで。 (そういえばいろいろあったな) 今考えてみるとこの数ヶ月は本当におかしな出来事にあふれていた。 空条徐倫との出会い、不思議なペンダント、スタンドの発現、マックイィーンとの対決、農地の捜索、F・Fと仲良くなり、キャッチボール、スポーツマックスへの報復。 『……我が名…イズ・フラン……ヴァ…ール…』 …なんだ今の?いや気のせいだろう。なぜなら周りを見回しても暗闇の中にはあたししかいないのだから。 報復をした後、エンポリオと三人で脱獄して、徐倫の元カレに合い、まぶたストーン、神父を見つけ、墜落した飛行機の記憶、虹、カタツムリ、ウェザーの過去、新月のとき。 『…力を司るペン…ン。この者に祝福を…』 何なんだ、ブツブツブツブツと。自然界にこんな音あったか? そうだ、祝福。アナスイのやつ何もあんなときに結婚の申し込みなんてしなくても… 『我の使い魔と…』って、 「さっきからうっせェーんだよ!!」 結論から言うと、あたしのいた場所は暗闇なんかじゃなかった。どうやら気を失っていただけのようだ。 使い魔の兄貴(姉貴)!! 最悪だった。 何が最悪って今日という日のすべてが最悪だった。 朝起きて、最初に会ったのがキュルケ。多少いやみを言われたが気にしていなかった、なぜならもっと大切なことがあったから。 次に廊下で風邪っぴきにあった。汗臭いデブもブーブー何か言っていたみたいだが気にしない。なぜならもっと大切なことがあったから。 そう、使い魔召喚の儀。 なんとしても失敗できないと気合を入れて臨み、それでも何回も失敗した。 周りの人たちは「何度やっても無駄」というような冷たい目で見ている。 それでも彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールはあきらめようとしなかった。 失敗とともに起こる爆発によってだんだんと大きくなっていく穴に向けて、何度も何度も杖を振り下ろす。 何度も何度も何度も何度も振り下ろす。 そして爆発回数が百回を越えるころ、ようやく彼女は召喚に成功した。 ひときわ大きな爆発が起こり、爆風によって飛んでいくデブ。やはりこういう役まわりなのだろう。 爆発によって立ち上っていた砂煙がはれる。ルイズがおそるおそる爆発のくぼみを覗き込んでみると、そこにいたのは人間だった。 ドラゴンでも蛙でもトカゲでもなく、空気を操る猫みたいな草でも曲乗りとかいろいろできちゃうしゃべる恐竜でもなく、人間。 周りのざわめきが次第に大きくなり、そして彼女への嘲笑へと変わる。 「ギャァーーーハハハハハハハ!」 「呼び出されたのは…平民だったァーーー!!」 「さすが『ゼロ』だ。こんなことほかの奴らは考えもしなかっただろうよォ~」 「いや、完璧にまいったスよーッ」 「は、腹イテェーよォ~~~~~」 「こ、コルベール先生!しょ、召喚の、召喚のやり直しをさせてください!こんな、こんな、へへへ平民を使い魔にはできません!」 彼女は教師に召喚のやり直しを求めた、が現実はそれを許すほど甘くはなかった。 「いいえ、その人を使い魔とするのです。ミス・ヴァリエール」 「でも!でも!!」 「いいですか、ミス・ヴァリエール。二年生に進級するには使い魔の召喚が絶対。 しかしこの儀式であなたは今までに失敗した回数を数えていましたか? 私が数えるのをやめるほどの回数、あなたは失敗しました。そして今やっと召喚に成功したのです。 もうこれ以上時間をかける余裕はありません。ここであなたが選べる道は二つ。 1.あきらめてあの人を使い魔にする 2.一年生をもう一年繰り返す さて、どちらが良いですか?」 コルベールはあくまで笑顔でそう告げた。 ルイズは思わず息を呑む。1を選べば現在更新中の伝説をまたひとつ築くことになるのだろう。 2を選べばゼロの伝説は修復不可能な完璧な伝説として後世まで語り継がれるのだろう。 道は二つあるらしいが本質的には道はひとつだ(無論ゼロ的な意味で)。 ならば考えるまでもなく答えは決まっている。 「契約……してきます…」 「よろしい、ならば早くお願いします」 がっくりと肩を落としたままルイズは爆発跡地の中心にいる人物へと近づいていく。 やはり平民のようだ。貴族やメイジならもっとマシな服を着ているだろうし、先住民(エルフといったか、授業で習った覚えがある)ならばもっと身体的特徴があってもいいはずだ。 脇のあたりでそでが止まっている服、頭についている怪しい石、顔の奇妙な化粧、十中八九旅芸人だろう。 ルイズは深くため息をつき、穴の中の人物との契約に取り掛かる。 「……我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 目の前の平民が動いたような気がする。当たり前だ。生きていなければ召喚できるはずがない。死体なんかを召喚した日には二つ名は間違いなくマイナス反転するだろう。 「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え…」 今度は動いた。はっきりとわかる。ブツブツと何かつぶやいている。 目が完全に覚めてしまうと厄介だ、さっさと済ませてしまおうと思い多少早口になりながらも彼女が呪文を言い終わり、契約のキスを交わそうとしたときに事件は起こった。 「さっきからうっせェーんだよ!!」 そう、いきなり倒れていた人物が目を覚まし飛び起きたのだ。 ここで重なってしまった不幸は三つ、 ひとつはルイズが驚いてしまい身動きひとつ取れなかったこと ひとつはエルメェスが意味もなく飛び起きたこと そして最後のひとつはエルメェスが起きたのがキスの直前。つまり二人の距離はほぼゼロ距離だったということ。 ゴチイィィンという鈍い音が響いた。 やはり今日は最悪だったと朦朧とした意識の中でルイズはそんなことを考え、そのまま意識を手放した。 TO BE CONTINUED・・・
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【TOP】【←prev】【MEGA DRIVE】【next→】 DRAGON S REVENGE タイトル DRAGON S REVENGE ドラゴンズリベンジ 機種 メガドライブ 型番 T-48143 ジャンル テーブルゲーム(ピンボール) 発売元 テンゲン 発売日 1993-12-10 価格 7800円(税別) 駿河屋で購入 メガドライブ
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中日ドラゴンズ2008年 開幕版 レアカード:☆5 立浪 和義(三) 野手 投手 先発 中継ぎ セットアッパー 抑え 野手 守 名前 背番号 投/打 年齢 血液型 出身地 ★ 打順適正 巧打 長打 走力 バント 守備 精神 守備適正 スキル 捕 一 ニ 三 遊 外 捕 谷繁 元信 27 右/右 38 A 広島 7 CBA型 59 59 54 70 82 67 A - - - - - 小田 幸平 26 右/右 31 A 兵庫 4 CBA型 50 47 47 70 73 51 B - - - - - 清水 将海 39 右/右 33 B 群馬 3 CBA型 50 43 46 63 64 56 C - - - - - 田中 大輔 22 右/右 24 O 広島 2 BCA型 45 46 49 54 60 44 D - - - - - 小山 良男 37 右/右 28 B 神奈川 1 CBA型 49 43 53 62 65 45 C - - - - - 一 ウッズ 44 右/右 39 - アメリカ 9 CAB型 69 85 42 41 50 76 - E - - - - 新井 良太 25 右/右 25 AB 広島 3 CBA型 59 58 54 54 57 63 - D - D - - 二 荒木 雅博 2 右/右 31 A 熊本 7 ACB型 69 46 81 69 80 74 - - A - - D 三 森野 将彦 31 右/左 30 AB 神奈川 7 CAB型 78 72 61 68 62 70 - C D C E C 中村 紀洋 99 右/右 35 O 大阪 7 CAB型 77 74 47 42 63 78 - E - B - - 立浪 和義 3 右/左 39 A 大阪 5 BBB型 66 57 61 60 58 79 - - E D - D 柳田 殖生 53 右/右 26 A 兵庫 2 BCA型 48 55 56 59 56 50 - D E C D - 堂上 直倫 1 右/右 20 O 愛知 2 CBA型 48 56 49 50 53 47 - - - D - - 遊 井端 弘和 6 右/右 33 B 神奈川 8 ABC型 78 53 71 82 83 78 - - - C A - 森岡 良介 45 右/左 24 A 大阪 2 ACB型 53 57 62 65 61 56 - - C C C - 中川 裕貴 32 右/右 23 A 滋賀 1 BCA型 45 42 56 50 52 48 - D D C D - 外 和田 一浩 5 右/右 36 O 岐阜 8 CAB型 83 72 55 44 51 73 - - - - - D 井上 一樹 9 左/左 37 A 鹿児島 6 CBA型 71 61 54 57 64 75 - D - - - C 英智 57 右/右 32 O 岐阜 6 ACB型 65 58 72 76 83 60 - - - - - A 李 炳圭 7 左/左 34 - 韓国 5 CBA型 60 60 56 58 63 61 - - - - - C 堂上 剛裕 63 右/左 23 O 愛知 4 BCA型 62 60 48 48 54 69 - E - E - D 藤井 淳志 22 右/右 27 O 愛知 4 ACB型 50 55 68 69 76 55 - - - - - A 上田 佳範 35 右/左 35 O 長野 3 BCA型 54 49 61 70 71 52 - - - - - C 澤井 道久 48 右/両 29 O 京都 3 ACB型 49 44 61 50 59 50 - - D D C D 平田 良介 8 右/右 20 B 大阪 3 BBB型 57 59 57 52 56 49 - - - - - C 中村 公治 56 右/右 27 AB 兵庫 3 CBA型 52 59 55 51 56 57 - - - - - D 普久原 淳一 62 右/両 25 O 神奈川 1 BCA型 40 46 57 58 57 43 - - - - - D 打順適正 例)ABC型 → 1~2番◎、3~5番○、6~9番× (リードオフマンパワー型) 例)ACB型 → 1~2番◎、3~5番×、6~9番○ (リードオフマン型) 例)BCA型 → 1~2番○、3~5番×、6~9番◎ (下位打線型) 例)BAC型 → 1~2番○、3~5番◎、6~9番× (クリーンナップ上位型) 例)CAB型 → 1~2番×、3~5番◎、6~9番○ (クリーンナップ下位型) 例)CBA型 → 1~2番×、3~5番○、6~9番◎ (下位打線パワー型) 例)BBB型 → 1~2番○、3~5番○、6~9番○ (バランス型) 投手 先発 名 前 背番号 投/打 年齢 血液型 出身地 ★ 体力 球速 球威 変化 制球 精神 変化球 速度 ス シュ Hシュ カー フォ スラ Hスラ シン Sカー カット チェ スク サー ツー パー ナッ Vスラ SFF 川上 憲伸 11 右/右 33 O 徳島 9 78 66 80 82 81 77 B - B C C - - - A - - - - - - - - 148 朝倉 健太 14 右/右 27 O 岐阜 8 81 68 83 80 77 69 A - - - B - - - - - - - - - - - B 149 中田 賢一 20 右/右 26 O 福岡 7 79 74 81 79 64 73 - - C B B - - - - - - - - - - - - 152 山本 昌 34 左/左 43 AB 神奈川 6 68 50 65 75 72 67 D - - - B - - C - - B - - - - - - 140 山井 大介 29 右/右 30 A 大阪 6 75 68 69 74 73 69 C - D D - - - - D - - - - - - B - 149 小笠原 孝 43 左/左 32 A 千葉 6 70 58 66 74 70 66 E - D - - B - - - - C - - - - - - 144 佐藤 充 16 右/右 30 AB 埼玉 5 70 52 67 65 69 67 D - - C C - - D - - - - - - - - - 141 浅尾 拓也 41 右/右 24 A 愛知 4 68 72 69 64 59 59 - - - E C - - - - - - - F C - - - 151 吉見 一起 19 右/右 24 A 京都 3 60 58 58 53 51 59 E - - E D - - - - E - - - - - - - 144 赤坂 和幸 54 右/右 19 B 神奈川 1 53 66 52 42 47 46 - - F - E - - - - - - - - - - - - 148 山内 壮馬 26 右/右 23 AB 愛知 1 56 62 53 46 49 52 - - E - E - - - - F - - - - - - - 146 中継ぎ 名 前 背番号 投/打 年齢 血液型 出身地 ★ 体力 球速 球威 変化 制球 精神 変化球 速度 ス シュ Hシュ カー フォ スラ Hスラ シン Sカー カット チェ スク サー ツー パー ナッ Vスラ SFF 鈴木 義広 23 右/右 25 A 香川 5 48 68 70 75 68 65 C - - - B - D - - - - - - - - - - 149 久本 祐一 61 左/左 29 O 大阪 4 54 68 66 65 64 64 - - E D C - - - D E - - - - - - - 149 チェン 21 左/左 23 O 台湾 4 58 56 70 67 62 63 - - C - D - - - - D - - - - - - - 143 高橋 聡文 67 左/左 25 A 福井 3 45 72 69 60 55 60 - - E D C - - - - - - - - - - - - 151 長峰 昌司 68 左/左 24 A 茨城 3 61 52 63 58 49 52 E - E D D - - - - - - - - - - - - 141 石井 裕也 30 左/左 27 B 神奈川 3 58 64 68 66 57 59 - - E - C - - - - - D - - - - - - 147 クルス 94 右/右 31 - ドミニカ 3 42 78 67 55 57 66 - - E D D - - - - - - - - - - - - 154 中里 篤史 18 右/左 26 O 埼玉 2 43 66 67 45 59 55 - - E E E - - - - - - - - - - - - 148 小林 正人 69 左/左 28 A 群馬 2 40 44 56 61 58 53 C - E - D - - - - - - - - - - - - 137 佐藤 亮太 50 左/左 25 A 長野 2 54 44 45 49 60 51 - - E - E - - - - - E - - - - - - 137 菊地 正法 47 左/左 24 O 静岡 2 43 52 55 59 58 58 E - D - D - - - E E D - - - - - - 141 齋藤 信介 38 右/右 26 B 愛媛 1 44 52 60 47 47 55 - - - F E - - - - - - - - - - - - 141 金剛 弘樹 0 右/右 29 O 埼玉 1 45 60 52 48 43 47 - - E E E - - - - - - - - - - - - 145 セットアッパー 名 前 背番号 投/打 年齢 血液型 出身地 ★ 体力 球速 球威 変化 制球 精神 変化球 速度 ス シュ Hシュ カー フォ スラ Hスラ シン Sカー カット チェ スク サー ツー パー ナッ Vスラ SFF 平井 正史 33 右/右 33 O 愛媛 6 51 74 80 74 67 73 D - - B E - - - C - - - - - - - - 152 抑え 名 前 背番号 投/打 年齢 血液型 出身地 ★ 体力 球速 球威 変化 制球 精神 変化球 速度 ス シュ Hシュ カー フォ スラ Hスラ シン Sカー カット チェ スク サー ツー パー ナッ Vスラ SFF 岩瀬 仁紀 13 左/左 34 AB 愛知 9 47 60 73 84 89 88 B - - - A - - - - - - - - - - - - 145 球種 シュート→シュ 高速シュート→Hシュ カーブ→カー スローカーブ→Sカー シンカー→シン スクリュー→スク スライダー→スラ 高速スライダー→Hスラ カットボール→カット ツーシーム→ツー フォーク→フォ チェンジアップ→チェ 縦スライダー→Vスラ サークルC→サー パーム→パ ナックル→ナッ 年齢表記について 年齢は全選手、本年(2008年で)の誕生日を迎えたと仮定した選手の年齢であり、年月日での判断はしないものとする。そのため、本来の年齢より1才繰り上げされる場合がある。 やきゅつくオンラインでの年齢データもそのように記載されている。 例)記載年月日 2008/08/17 →三木 肇 1977/04/25 →誕生日での判断 31才 →年度での判断 31才 例)記載年月日 2008/08/17 →金子 誠 1975/11/08 →誕生日での判断 32才 →年度での判断 33才 2007年版
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前ページ次ページゼロの使い魔は魔法使い(童貞) このトリステイン魔法学院には宝物庫というものが存在する。 その中ある宝物を盗もうと企んでいる盗賊がいた。その名も『変わり身のフーケ』 彼女からトリステイン学院に予告状が送られてきたのが先日の話だ。 『あなたの学院の宝物庫からあるものを盗みます フーケ』 変わり身のフーケという二つ名は周りの人物が畏怖をこめてそう呼んでいるものだ。 彼女は戦闘中にある姿に変わりその姿を見たものの命はないという。 「ねえ……どっかで聞いたことある事と思わない?」 「……っえ?」 ルイズとエイジは宝物庫の見張りをしていた。 二人して扉の前に座り込み、ルイズはフーケによる被害状況がかかれた紙を眺めていてエイジにそんな質問をしたのだ。 「あんたの"魔法"と似ている気がするのよ。戦闘中に姿を変えるとか、魔法を見たものの命はないとか。」 「気のせいじゃないんですかね……ハハハ……」 エイジは空笑いをするしかなかった。自分と同じ"萌"属性の魔法使いなどこの世界にはいないと思っていたのに。 萌属性の魔法使いが俺一人だったら、姿はあれだけれども 俺TUEEE状態になってモテモテになって王侯貴族になって、ハーレム、ハーレム、ハーレム! ……なのにっ! なのにっ!!! 「なんで俺の邪魔をするんだよおおおお」 「ってあんた、煩悩丸出し。まだフーケが"萌"属性の魔法使いって決まったわけじゃないのに。」 「すいやせん。取り乱してしまいやした……」 そのままエイジは黙り込んでしまった。ルイズもつられて黙り込んでしまう。 ずっとそんな状態で朝まで迎えるのだろうか。と思ってたらエイジの目がカッと開いて急に立ち上がった。 「どうしたの!?」 「何かが…来やす」 はたしてそれは窓から急にやってきた。 「危ない!」 エイジはガラスの破砕からルイズをかばい、目の前の敵を見定める。 目の前の敵は茶色いフードを被っていて姿を確認することは出来ない。しかし、わずかに見えた口元がにぃ…と歪むのが見えた。 「パソピア!!!」 ボンという爆発。これは"萌"属性の魔法使いの特徴。もはや決定的だった。 「変わり身のフーケ」その正体は"萌"属性の魔法使いだったのである。 「マジカルチェーンジ!!!」 彼女は手に持っているステッキを一振りさせて自分自身を眩い光に包ませる。 「なっ、なによこれ!? 全然前が見えないじゃないのよ!」 エイジはその光をものともせずただじっと見つめていた。 「……確かに全然見えやせん。朝アニメでももうちょっと見えるんですがね。」 つまり彼女が変身している間二人は一切の攻撃をする事が出来なかったのだ。 「何っ!」 彼女の姿は全身を紺色のスクール水着で覆い、頭には小学生とかが被る黄色い帽子をしており、下は白いストッキングを履いていてなぜか右足のほうだけずり落ちていて生足を露出させていた。 よくみると背中にはランドセルを背負っておりオレンジ色のカバーをしたリコーダーがはみ出している。 これが変身した「変わり身のフーケ」であった。 「……あんた何よ、その格好! 年ってものを少し考えなさいよ!!」 「うっさいわね! これが一番最適な衣装なのよ!」 「どこがよ! ただの年増女が無理して変な服を着てるだけじゃない!」 「変な服って言うなぁ!!!!」 ルイズが顔を真っ赤にしながら突っ込んだ。フーケも羞恥で顔を真っ赤に染める。 「はぁはぁ………」 「とぁっ!」 「はうっ!」 そんな様子のエイジを見てルイズは喉元にチョップを食らわせた。エイジは悶えながら床を転げまわった。 転がりまわったところでふと地面を見るとフーケの素足が見えた。 そして、改めて変身姿のフーケを眺める。そして一言 「キレイだ………」 エイジはすっかりフーケに見とれてしまっていた。そしてフーケから追い討ちをかける一言が 「エイジ君………きれいなおねえさんって、好き?」 「うん。ぼくちんきれいなおねえさんだいしゅき!」 いつの間にか赤ちゃん言葉になっているエイジが彼女に感じている"萌え"という名のエナジーは臨界点を突破しつつあった。 おねえさん、ランドセル、スク水、通学帽、たてぶえ、処女、羞恥、羞恥、羞恥、羞恥………そして手に持っているステッキ……ステッキ!? 「死になさい」 フーケがにやりと笑うと見る見るうちにステッキが光り始めた。 「マジカルコケティッシュウェーブ!!!!」 「!!!!」 ステッキから鋭い光線のようなものが放たれた。エイジは直下でもろに食らってしまいたちまち吹き飛ばされた。 「ぐわぁっ!!!!」 「エイジっ!」 あの魔法使いであるエイジを子ども扱いしたのだ。到底ルイズに敵う相手ではなかった。 「エイジ、あなたには"萌"が足らないのよ」 フーケはそう吐き捨てた。エイジもルイズも動くことが出来なかった。 「この"萌"パワー(略称:MP)は自分から補給するだけではない。他者から得た"萌"の感情もパワーに変えることが出来る! 私にやられたやつらもみんな私に萌えて死んだ。文字通りの『萌え死に』だったのよ!!」 「くっ………」 エイジは舌打ちした。いくら年上とはいえまだ20代前半の若くて綺麗なおねえさんだ。そんなお姉さんがあんなロリロリした衣装を着てたりなんかしたら…… 「自分、もう辛抱なりませ(ドゴッ)ぐはぁっ」 「だから煩悩をそのまま口に出すなぁ!!」 思わずルイズは突っ込みを入れてしまった。それに気づいたルイズははっとなり杖をとってフーケのほうに向けた。 「ほう……あんただけは私と戦う気かい? でもね狙いはあんたなんかじゃないんだよ!」 そしてフーケはどこからともなく特大注射器を取り出した。 「よっ、よせっ!! やめろっ!!!」 ドスッ 「ぎゃああああああああ!!!!!」 エイジの尻に特大の注射器が差し込まれた。エイジの体から魔法力がどんどん吸い取られていく。 「ああああああっ!!!!」 きゅぽん。 注射器が抜かれた。エイジが「パピコン!」と唱えても、もうステッキが出ることは無い。 「魔法の使えないあなたは変態……いいえただのド変態よ!」 フーケの体が光りだす。どうやら先ほどの一言によってまたパワーアップしたようだ。 「これで死ねっ! マジカルコケティッシュウェーブ!!!!」 フーケの魔法が放たれたその時、一頭の竜がルイズの前を掠めていった。 大きな爆発の後、そこには何も残っていなかった。 「………消えた!」 目の前の獲物が消えたのにどこか嬉しそうに微笑むとフーケはゴーレムで宝物庫の壁を壊しにかかった。 「間に合ってよかったわ………」 ルイズ達をドラゴンに乗せた彼女は思わず息をついた。 「何のつもりよキュルケ! これから私があのフーケをけちょんけちょんに倒してやるところだったのに……」 「お嬢さん……」 「何よ! この使い魔だってなんか変なものに刺されてたし、 あんたじゃあの『変わり身のフーケ』に勝てるわけ無いじゃない! せっかく助けてやったんだから少しは感謝しなさいよ!」 「べっ、別に好きで助けてもらったわけじゃないんだから!! ……でもちょっと感謝してるわ。 えっ、ええ!ちょっとだけ、ちょっとだけ感謝してあげるわ。これでいいかしら?」 「最高です!」 「あんたは黙ってなさい!」 ルイズが暴れようとしてるところを慌てて取り押さえるキュルケ。 一方竜の持ち主である彼女はただ前を見つめて小さくこう言った。 「学院長室へ向かうわ。スピードをあげるからしっかりつかまってて。」 スピードがあがってルイズもキュルケも竜にしがみついている中で、 ずっとエイジは自らの傷だらけになった右手を見つめていた。 前ページ次ページゼロの使い魔は魔法使い(童貞)